2004-04-01から1ヶ月間の記事一覧

店員の女のコは、チーズが載せられたクラッカーを俺たちに渡し、「場所移動させちゃったりしてすみませんでした」と頭を下げた。お姐さんは「いいのよ」と手を振った。俺は店を出て、クラッカーを口に放りこんだ。角を曲がるまでの数十歩、俺たちは口をきか…

レッド・チャイナから来た男が来た男が言ったんだ。「JAVAで三次元画像処理をすると遅くてたまらない」俺は深くうなずいた。男は続けた。「Pixelクラスはグレイバリューを保持していてね」「ちょ、ちょ、ちょっと待て。きみは画素ごとにインスタンスを作成し…

朝陽が眼にまぶしいんだ。これから帰って、ごみ出しをして、また出かけるんだ。

「おまえが言うな」と、誰かが告げた言葉がえんえん反響する。最初に告げられたのはもちろん、俺が生まれるずっと昔のことだ。だから、母の肚にいるあいだに、既に答えは出ていた。「俺が言う」と歪ませた唇から吐き出すさ。それは「俺が殺る」と叫ぶことと…

昼下がりの陽光を見つめていた。木漏れ陽が美しいものだと、あらためて気づいたのはいつのことだったか。仔供のころ、きらきらと輝く森のなか、下生えをかきわけて走りまわった。冬眠した熊の、あるいは太陽(と流れる水)に怯える吸血鬼の生活を送るように…

『エラゴン』、一晩かかってようやく読みおわった。可も不可もない。普通のファンタジィもので、普通のジュヴナイル小説だろう。暇つぶしには良いが、ぶあつくて本を持つ手が疲れるのが難点だ。

ここのところ、酒を呑むことが多い。体重を気にすることしきり。酒自体の熱量もさることながら、酒を嗜まない知り合いが多く、酒しか出てこない店に行くことは少ないからだ。必然、そういう店にはひとりで行くことになる。しかし、そういう店にはおだやかな…

プレゼンテーションの前の雑談で、俺はのけぞった。某社では、海外出張はおしなべてビジネスクラスで行くという。新入社員であっても、行き先が韓国や中国であっても。経常利益が一兆円を越えている企業は違いますね、と俺は口にした。どうやら、業界の常識…

お台場に就職した哥貴分は、修学旅行で訪れる女子中学生相手にナンパ張ってるんだとさ。歳がダブルスコアかましてるって事実から眼を背けながら。ご苦労なこった。俺が爆風スランプを聴いていたころ、俺は今の半分くらいの歳だった。中華街で粥を食ったり、…

ニュースをクリップするなんて似合わないことをやるとしたら、それにはいつだって理由があるんだ。皆の衆、俺たちゃ徒党を組んでこれを観ようじゃねえの。熱核戦争でぶっこわされたもうひとつの八〇年代を舞台に、少年が愛を叫ぶみたいだぜ。そんな素敵な八…

ファイルタイプにさよならを。

仕事が行き詰まると、Carbonのドキュメントを読んでいる。副教材はmozillaのソースコードで、クロスプラットフォームのアプリケーション開発で部分的にCarbonのユーザインタフェースを使おうなんてユダにはぴったりだ(このユダは『北斗の拳』のそれじゃない…

アレなことを言い返すとさ、だからこそ、俺たちはものを貸したり借りたりするんじゃない。たとえば『スキマスキ』にはっきりと、綱領としてそれは描かれている。つまり、「女のコ」と話すきっかけを保持しつづけるために「男のコ」はものを貸すのだ、と。 as…

なにもかもが市場にぶちこまれ、差異と価格しか存在しない世界で、けれども怨念はまだある。怨念なんて持ってないふりをする巧妙なやりくちを身につけたとしても、それはまだ確かにある。渋谷のカフェでiPodに入った『イントロダクション〜世界革命戦争宣言…

あるいは、ゲバ文字フォントがどのように作られ、どのように受容されているかについて述べよう。ゲバ文字フォントは共産趣味者によって制作され、配布された。オリジナルの配布ページはUG系(アンダーグラウンドの略だ)に存在していた。ある種の事情により…

九〇年代をサバイヴするために、そうなることが必要だったというのなら、それは本当の意味で資本主義に万歳を叫ぶことと同義だった。毛ほどの猶予もなし、本当の本当に市場のみを信仰する覚悟を持つことだった。復刻された『頭脳警察』をボックスで購入し、i…

どれもこれもがサブカルになったのは、どうしたって大塚英志のせいだ。『摩陀羅天使篇』がどういう物語だったか忘れたとは言わせない。高校教師として登場する兵頭沙門は、偽史と過激派教本で子供たちを爆弾闘争に駆りたてていった(こんな話をジュヴナイル…

育ちが悪かった。港町の古本屋に入り浸っていたり、ストリップ小屋が立ち並ぶ通りを抜けて図書館に通っていた。古本屋には時計に関する同人誌が置いてあったし、図書館には作品社版の『パルチザン伝説』があった(白状すると、俺は二三七ページ全部コピーし…

いつから俺はサブカルになった? 知らねえよ、たぶん、九〇年代をサバイヴするためにサブカルのふりをする必要があったんだろう。じゃあ、その前は? もちろん、アングラだったに決まっている。って、まさか? 本当に?

渋谷の街に若者が群れていた。たばこに火をつけ、三度、深く吸って吐いた。ハチ公前に喫煙スペースが整備されていた。春先に工事していたのはこれのためだったのかと、今更に気づいた。若者がプラカードを掲げて、駅前を行進していた。言うまでもなくどこぞ…

ベネズエラの正式名称なんて訊かなきゃ良かったと思わないじゃない。吐き捨てるように彼女は(英語で)「今の大統領はコミュニストなのよ」と告げた。若くてキレイな女のコが「コミュニスト」なんて言葉を発するのを聴くのは久しぶりな気がした。いやいや初…

モテる人間は、デートに財布を忘れない。この本に書いてあることのひとつはそれだ。そんな本を読んで、本当にモテるようになるだろうか。アメリカ人ってのは莫迦ばっかだからなあ、せせら笑いながら俺は、ぱらぱらとめくりはすれど真剣に読むことはしなかっ…

テレビ買いにいったら、売り切れてた。とぼとぼ歩いて帰ってきた。ふて寝した。

ゴールドベルグ変奏曲を聴きながら考えているのはアルゴリズムの証明なんだ。キャンドルを焚いて、揺れる炎を眺めながら考えているんだ。そんな金曜の夜も悪くないと思わないか。

ようこそ、友よ、現実の砂漠に。俺たちが合目的だとしたら、俺たちの取るべき手段はふたつだけだ(だって、選択肢はいつだってふたつだけだもの)。 可処分所得を増やすか。 可処分所得の配分を変えるか。 ふたつしかないことに我慢ならないならば、よろしい…

『モテるための技術』とかなんとか、すべての教則本はひとつの暗黙または明示的な出発点を仮定する。括弧に閉じこめられたエクスキューズ、「(貧乏ですみません)」、つまり、そういうことだ。愛が金で買えるかどうかは神様(の見えない手)しか知らないが…

お姐さんは言った。「しかし、ベンツが多い街だわね」俺は煙草に火を点けた。「あなたが言うことではないと思うな。白いベンツに乗って通勤している女が言う科白じゃない」「自慢じゃないけどね、まだローンが二年残ってんのよ」俺たちは渋谷区と目黒区の境…

『ババアゾーン』サントラ asin:B0001VJ80Q

明日から渋谷パルコで『ハチミツとクローバー』原画展。14日まで。

メモ帳。まずは映画(id:moyu0:20040405#p1に追加)。 Lovely Rita ヒロインがキレイ。キレイなヒロインが誰かに似てる。と、予告編を見た俺は考えた。誰に似てると考えたかはヒミツ。 ドラムライン なんか気持ち良さそうだった。「驚異のマーチングバトル」…

「そういや、そのころ仕事場にいたのって、真顔で好きだよとか愛してるとか告げて恥じない連中ばかりだったわね」なんてことを、お姐さんは吐きすてるように言った。俺はにやにや嗤った。若者が「はぁ、そうなんですか」と相槌を打った。「あんたも含まれて…