育ちが悪かった。港町の古本屋に入り浸っていたり、ストリップ小屋が立ち並ぶ通りを抜けて図書館に通っていた。古本屋には時計に関する同人誌が置いてあったし、図書館には作品社版の『パルチザン伝説』があった(白状すると、俺は二三七ページ全部コピーした)。そういう行為のどれもこれもがサブカルになるのは、もうすこし後のことだ。そのころ、まだどっちに向かって走りだせば九〇年代を突破できるのか誰にも判っていなかった。