[文学フリマとあんまり関係なくなってきた] 通過者たちの文体 (1)

 おしなべて、ぼくの周囲にはそんな奴らしかいない。
 マカオに往ってきたと告げれば、「『深夜特急』は読み直したか?」と返すような奴らだ。
 高校生の時分に読んだ単行本は、実家に放ってきた。母親が買い、ぼくと(勘当された)ぼくの弟に与えた幾冊だ。『沢木耕太郎ノンフィクション』は九巻全部を買いそろえたはずだが、記憶といっしょに酒場のくらがりにバラバラに溶けていった。
 だから、ヴィレッジヴァンガードで買い直すことにした。
 文庫版を。