敵の名を。

敵の名なら知っている。それは同時に俺の名でもあるのだから。しかし、異なっていたはずだ。なぜなら、十代だった俺ですら、そんなことはとうに判っていたし、そんなことはしなかったのだ。(幸福にも)イナカに産まれなかったというのはそういうことだろう?

たとえ、結果的にやっていたことが同じだったとしても(いや、もっと悪かったかもしれないが)、地方出身の女のコを口説かなかったことだけが、遡及的に俺と「やつら」を分けるのだ。今では、今や、もう。