夢を見た。ホテルのラウンジで俺は誰かと話していた。俺は告げた。思想家は痩せているべきだ。そんな科白を、ほかの場所、ほかのとき、誰かに告げたような気がした。何度も何度も、俺はそんなことを話しつづけているのだろう。夢を見ていた。夢のなかで、俺は珈琲を唇に運ぼうと手を伸ばした。眼をさますと、部屋はまだ薄暗かった。起き上がり、ふらつく脚で立ち、便所まで歩いていった。長い小便に舌打ちすると、昨日の酒の名残が舌にざらついた。部屋に戻り、蛇口から直接水を飲んだ。冷たい感触が胃のなかでとぐろをまいた。椅子に腰をおろし、珈琲を淹れる準備を始めた。カフェはまだ正月休みで開いてなかった。