薄暗い時分に意識を取り戻した。鳥のさえずりをかすかに聞いた。低く男女が話す声が床をつたった。俺は上体を反らせ、枕元においた携帯電話に手を伸ばした。階下から聞こえる声はテレビの音声のようだった。ボタンを押すと液晶の画面が明々と部屋を照らした。まだ、カフェの開いていない、早い朝だった。そもそも、近辺のカフェはまだ正月休みで開いていなかった。熱い珈琲が飲みたかった。早く起きたのだから、俺は思った。洗濯機を回すのにちょうど良い朝にちがいない。三が日の終わり、週末の始まり、良く晴れると思しき冷たく澄んだ空気。洗濯をするのにこれほどぴったりの朝はそんなにない。けれども、コインランドリーの営業時間は伸ばした指先よりもずっと遠くにあった。俺は熱い珈琲を淹れるために起き上がった。階下のテレビの声はまだ続いていた。