[文学フリマ] これはやっぱり運命だと思う。
そ奴が失踪して、いくつかの春が来て、いくつもの秋が去った。ぼくはオトナになることに失敗しつづけ、ずるずると大学に居残っていた。魔術的なX端末は駆逐され、ピカレスクなiMacがやってきた。女にふられたぼくは腹いせにアップルユーザになり、PowerBook以外のノートパソコンを使わないことに決めた。
ちょうどそのころ、 id:sayukなる人物の日記が、ぼくたちの間で話題になった。
ぼくたちは唖然とした。
ぼくたちのなかで、意見が分かれた。
意見が分かれたが、結論は一緒だった。
あ奴だ。あ奴しかいない。
ソウルセットとボルヘスの話をまとめてしちまう奴が、ごろごろしているわけがない。
緒川たまきと桐山襲をキーワード登録するなんて所業、あ奴以外の誰がやるだろう。
だけど、と、ぼくたちは唇を歪めて言った。
「インターネットは広大だから、もしかしたらあ奴に似た誰かがいるのかもしれない」
第二回文学フリマが、近づきつつあった。