時間銀行と葉巻。

ひとんちの亀に勝手に「カシオペイア」と命名した。だって、亀の名前が「みどり」じゃあんまりじゃないか。なんていうか、ニッポンの貧しさを象徴してしまいそうな名前だ(といって、『昭和歌謡大全集』が元ネタだというわけでもなく、単にミドリガメだったからなんだけど)。

今年の誕生日はいつですか、と、しばしば鋭い匕首がつきつけられる。というのも、俺は二十九歳貯金を実施しており、毎年一回誕生日が変わるからだ。二十九歳貯金とは、二十四歳のときから二十九歳だと言い張ることによって、三十四歳になっても二十九歳のままでいるという遠大な計画である。この計画を話すと、たいていみんな鼻でフンと嗤う。葉巻にして喫われちゃうよ、なんて嗤いやがる。

だけど、その点こそが重要な点だ。あの童話を最初に読んだとき、仔供だった俺はそのことに気づかなかった。葉巻というのは、そもそもが時間のかたまりだ。一本喫うのに一時間近くかかるという事実が、それを証明している。きみたちに警告してもらうまでもない。俺は、俺自身の時間を葉巻にして喫ってしまうために「貯金」をしている。

カシオペイア」を横目に俺はそんな話をした。