上体を起こし、左手でリモコンを操作しながら、右手でまぶたを押すと、寝不足の眼が悲鳴をあげた。目覚まし時計が、今日は燃えるゴミの収集日だと主張していた。ぬぎちらかした上着とコートを着こみ、ゴミ袋を両手にぶらさげてよたよたと階段を下りた。くだらない雑誌とくだらない単行本と、もう着ないだろう服が袋にぎっしりつまっていた。木造アパートを出て二十歩の距離に、既にゴミ袋はうずたかくつまれていた。誰も彼も、正月の間にゴミをためこんだのだろう。誰が落としたものか、からからにひからびた蜜柑の皮が道路に転がっていた。俺はそれを拾いあげ、封の甘い袋にねじこんだ。そういえば、この冬はまだ蜜柑を食べていない。暖房がほどよくあたためた部屋で、一昨日から読み直している本を数ページ読んだ。あいかわらず、ほとんど訳が判らなかった。蜜柑よりも、まずは珈琲だった。