目醒めは遠く、珈琲と煙草を交互に口に含み、俺は長い長い夜をやりすごした。山積みにされた仕事はいっこうに減る気配を見せず、むしろどうやら増えていく気配さえあった。iTunes はグールドのピアノを無限に再生した。俺はキーボードを叩きつづけた。腹が減ると蒟蒻畑をゆっくりと噛み、チョコチップスナックをくわえた。気づけば、バーも閉まる時間になり、一杯ひっかけるなんてささやかな幸福は望むらくもなかった。仕事場の机のうえには無論バーボンが用意されていたが、まだそれを呑むべき時は訪れていなかった。