不思議に思っていることがある。なぜ、滝本竜彦は、おたくサークルに入って興味が重なりそうな女のコを(エヴァの話をいっしょにしてくれるような女のコを)探さなかったんだろう。滝本竜彦綾波レイについて語り、女のコが碇シンジについて語れば、たとえどんなにすれちがっていったとしても、なんだかそれなりに幸せそうじゃないか。HRUT(id:HRUT)は、土地柄のせいさ、と答えた。彼のたどりついた「東京」のことを思えば、納得のできる話だった。しかし、それは理由ではなく結果だったんじゃないか? 滝本竜彦は信じていなかったから、探さなかったんじゃないか? 探さずに、エヴァの話をいっしょにしてくれる(表現の道具としての)脳内彼女を作りあげた。「信じていなかった」その理由は、「北海道の、人口数千人のド田舎」のせいで、つまりは、土地柄のせい、なのかもしれない。

滝本竜彦脳内彼女はアニマではないと転(id:tenkyoin)が告げた言葉は今でもぼくのなかで引っかかっていて、それは、滝本竜彦は少女になりたかったのではないか、という言説に首肯することに不安を感じさせる。同時に、少女になりたかったぼくが、またしても滝本竜彦になにかを仮託しようとしているだけではないのかとも思う。あるいは、(舞城王太郎はともかくとして)滝本竜彦が少女マンガに対する言及を行わないのはどうしてなのか、という疑問でおきかえてもいい。

ぼくたちはなぜ少女になりたかったのだろう。もちろん、きみとぼく、ぼくと彼の理由はさまざまに異なるに決まっているけれど。