『滝本竜彦が漂着する場所』ノート

思いついたことを書き連ねてきた「ノート」も、そろそろ残る頁数が少なくなった。まとまりがなく、いくつかの誤りを含んでいるが、原稿にしていく段階でちくちくと修正していこうと思う。この「ノート」は、結局、滝本竜彦に仮託して、怨念や怒りといったもやもやしたものについて語りたい俺自身を確認するために必要だった。

最後に、村上春樹について、まとまらないのでいくつかの抜き書きを。

ファウストジェットストリームトークセッション

滝本:僕はとりあえず中学生のころ『ノルウェイの森』を読んで下半身が興奮したことだけは覚えています。
斉藤:あれはエロ話だったんだ!
佐藤:手コキシーンとかですか? もう……ダメじゃん!
斉藤:いや、すばらしい(断言)。これはいい話です。
滝本:ていうか、奴ら(春樹氏の作中人物)はモテすぎですよ。僕は小説を書くと必ず「こんな男にこんなに簡単に女の子が寄ってくるハズない、都合よすぎ!」とか言われるのに春樹は絶対言われない。不公平ですよ。

気になった言葉。なんでだろう。あのころの俺も、うそくせーって思わなかった。

心の中でぼんやりと思っていたことにかたちが与えられた思いがする。なんで、ひとりで「やれやれ」している男に女の子が話しかけてくるシーンをうそくせーと思えなかったのか。

別の誰かの言葉。

滝本竜彦や私が恐れているのは、「恋人が現れない」ことではなく「恋人が現れてしまうこと」のほうである。」

近頃の俺のスタンスが、現れてしまった後について語るという卑怯なスタイルだということは判っている(自己批判するつもりはないが)。俺にとって、それは漂着するために必要だったことだ。だが、滝本竜彦が漂着する場所はそこではないはずなのだ。と、俺は信じている。