『滝本竜彦が漂着する場所』ノート

『NHKにようこそ!』の革命爆弾は、俺にとってまったく自明のものだった。説明するまでもなく、説明されるまでもなく、判りあうことができるものだ。だけど、その感覚はやはり狭い空間でしか通用しないものなのだろう。それがどれくらい狭いかというと、Google で革命爆弾について検索しても、滝本竜彦に関係しそうな文章は、

くらいしか見当たらないといった具合だ。そして、この『革命は続いているか』を書いた三ツ野陽介なる人物は、どうやら友人の友人であるらしい。あのキャンパスの、よどんだ空気のなかでくだらないことを話していたひとりなのだった。

つけくわえておくことがひとつある。川西蘭の『パイレーツによろしく』と対比することで、彼我の差をより明確にしよう。

なぜ、そうしなければならないのか。『パイレーツによろしく』においても、主人公が戦争を欲求するシーンがある。戦場において、自分が良い戦士になれるであろうと告げるシーンがある。『パイレーツによろしく』においても、革命を志す人物がいる。そして当然のように、八〇年代の空気のなかで敗北していく。主人公もまた、なにかに敗北していく。基調とする空気は良く似ている。似ているが、異なっている。「あらかじめ」判っていない者と、「あらかじめ」判っている者たちの違い、それが猫を殺した(比喩ではない。『パイレーツによろしく』では、主人公が猫を蹴り殺す)。無論、猫を殺したことで、傑作たりえたのだが。