《自動》回転扉=《速度》簒奪機械

機械という言葉の意味を俺に教えてくださったのは、中村健之介先生だった。俺はエンジニアリングのなんたるかを、そのための学部で学んだはずなのに。そもそも、そのための学部がそういうことを教えてくれるのかどうかすら知らない。

バブル期に計画された都心の再開発計画が、一様に回転扉をビルディングに備えているのはもちろん偶然じゃない。つきつめりゃ、そりゃ誰かがかっこいいと思ったからに決まっている。だけど、問題はどうしてかっこいいと思ったかだ。言ってしまえば、回転扉が権力的だからだ(暴力装置であるってことも、証明されたわけだけどネ)。じゃあ、どうして回転扉が権力的なんだ?

回転扉は、いやいや最終兵器たる《自動》回転扉ならばなおさらに、俺たちから固有の速度を奪う。だって、考えてもみてほしい。権力の象徴たる自動改札だって、通過する速度くらいは選べるじゃないか。《自動》回転扉はそんな甘えを許さない。いまや速度は、扉が回転扉であるためだけに決定され、回転扉は回転するために回転しつづける。

同志諸君、もう充分だろう。我々は、ベンチやレストランやホテルに加え、回転扉も標的に加えなければならない。