机に脚を放りだし、椅子に深く躰を沈めた。珈琲をすすりながら、頁をめくった。液晶の画面が洩らした明かりを頼りに文字を追った。マウスカーソルは、コンピュータが処理中であることを示していた。小説家が、パパの旅路を逆走していくというエッセイだった。軽い眩暈が襲った。手を伸ばし、溶けかけた生チョコを口に放りこんだ。コンピュータは、まだ処理を続けていた。パパとは、言うまでもなくヘミングウェイのことだった。