雪の夜は、ささやかなラヴストーリーを話そう。クリスマスイヴの夜、B'z のライヴで出逢った少年と少女の物語だ。友達にドタキャンされた少年は、二枚のチケットを握りしめて、とぼとぼ歩いていた。友達がどんな友達だったかは知らないけれど。

クリスマスイヴの夜、チケットを取れなかった少女は東京ドームの前でスケッチブックを抱えて座りこんでいた。スケッチブックが、チケットをゆずってくださいと(ダフ屋の声よりはささやかに)主張していた。

そうして、彼と彼女は(あるいは彼女と彼は)出逢った。ライヴが終わり、奇しくも同じ大学に通っていることが判ったふたりは、大学の近くのバーで夜明かしすることにした。くちさがない雀たちは、なんで湯島に行かねえんだ、とささやきあった(湯島ってのは、そのあたりのホテル街のことだ)。

気の抜けたビールみたいなラヴストーリーにもちゃんとオチはついていた。朝が来て、支払いをする段になって、少年のほうはおあしがたりなくなった。ああ、つまり、ホテル代が足りなかったんだね、と、雀たちは納得した。そして、なんだか祝福してあげたい気分になった。なぜって、クリスマスの朝だったものだから。