ぼくの言葉が信用ならないだなんて、そんな戯言は聞き厭きた。ここには嘘しかないと、繰り返したはずだ。女のコに「あなたの言うことは信じられない」となじられるたびに繰り返してきた。だけど、堆積した嘘は、いつか真実になるとぼくはまだ信じている。

ぼくは手に入る限りの村上春樹の小説を所有していて、エッセイやらなにやらは半分くらい所有している。所有している著作はすべて読んでいる。そして、ぼくは、村上春樹(の著作)が好きだ。ぼくはそのように自己を規定した。それはあの八月、「キミ」とはまた別の女のコと別れたぼくが必要とした規定だ。

だから、さよならを。昨日に忘れられたさよならを。