同居人が家出した。一週間くらい帰ってこない。音信不通。まあ、いいか、と思う。かわいい仔猫ちゃんだったら話は別だけど。すれっからしの猫の心配をするのに、人生は短すぎる。始めようか。ぼくたちの東京星のおはなしを。

誤解したひとはただひとりしかいないけど、ぼくの同居人は男だよ。都の西北でテニスばかりやっていた、ぼくよりいくつか年上の男だ。いまの職業はなんだか判らないけれど、たぶん自由業ってやつだと思う。つまりろくでなし、ってわけ。丸井で赤いカードを作りませんか、と言われて、住所不定無職だから無理です、と言えちゃうくらいダメ人間。いや、それを試したのは、ぼくなんだけどさ。あわれみの眼で見られるのも悪くないって思ったね。

同居人がいる、という話をすると、ああ、ルームシェアしてるんですね、とうなずかれる。確かに、二部屋あるのだけど、と告げて、ぼくは肩をすくめる。一部屋に布団が二枚しいてあんだ。なんてことを話したら、なんだか喜んでしまった女性がいた。隠れ腐女子ってやつだった。気づかないふりをして、ぼくはその女性にしようもない話をした。風呂なしトイレ共同であるとか、固定電話がないとか、基本料金を払うのがいやでガスの元栓を開いてないとか。

そんなぼくたちにもようやく判ってきたことがある。住んでるところの話って、ネタにしやすいし、笑いもとりやすいんだけど、そんな貧乏くさいところに住んでいる男はダメだ。ダメっていうか、モテない。って、気づくのが遅えよ。莫迦か。