滝本竜彦がたどりつく場所』を書きながら思い出したこと。

ある時期、ぼくは年齢を詐称していて、それは、年齢を訊かれたら二十九歳であると答えるという他愛のない遊びだった。三十路に入っても二十九歳でいられるように、今から年齢を貯金しておくんだ、なんて、言い訳まで用意してあった。だけど、そんなのやっぱり言い訳でしかなかった。

高校生のころ、たったひとり、桐山襲を読みあさっていたぼくは、なにかに遅れてしまったという感覚を植えつけられてしまったのかもしれない。その「なにか」とは、もちろん、革命とかそういうウンコではなく、もっと別のものだ。