2004-03-01から1ヶ月間の記事一覧

なんのために生きているかと問われたら、宵のはじめに一杯つけるバーを手に入れるために生きていると答えましょう。街々にそれを見つけることなしに、どうして三十歳になれるでしょう。だって、そのように生きなかった三十過ぎは(おそろしいことに)信用さ…

咽喉にこびりついたシャンパンを洗いながすために、ぼくはえんえんとビールをあおりつづけました。居酒屋でなんこつ揚げを頼み、ライスを註文しようとしたところで、同行者に止められました。ぼくの最強伝説はまだ始まりさえもしないようでした。

表参道から渋谷まで歩いていきました。ぼくの風体はまるっきり不審で不詳でした。二十九歳と名乗れば、ひとは納得するでしょう。もちろん、それは真実なのですけれど。ぶらさげたネクタイさえなければ、ジャパニーズマフィアに見られてもおかしくありません…

酒を呑んで話したことを、翌朝のぼくたちはいつも忘れたふりをします。だけど、けっして忘れているわけなんかないのです。もしも、ぼくたちがそれを手に入れられなかったとしたら(あえて、過去形で語ることにしましょう)、ぼくたちがそれを強く強く望まな…

広尾から表参道までタクシーに乗ったら九八〇円でした。ぼくは生まれて初めて、「釣りはいらねえよ」という科白を口にすることができました。とても、とても恥ずかしかったです。

タクシーの窓にプラダのビルが通りすぎていくのを、ぼくは「うろこ最終兵器だぁ」と喜び、手を叩きました。青山のデートコースの定番といえば、IDÉE から回り込んでプラダに行くと決まっています(arai さんとふたりでそう決めました)。同乗者は珍妙な猿を…

橋本治を読みながら珈琲をすすると、信じられないくらいにするするとこの国のことを理解した気分になるのです。それはきっと、在りし日の吉野家の牛丼よりも高い珈琲のせいなのだと思います。あまりにも理解が進んだので友達の結婚式に遅れそうになるところ…

歩きつづけました。そのほかに、内圧を高めていく方法を知りませんでした。歩き、そして歩き、唄いながら歩き、煙草を喫いながら歩き、品の良さそうな服を着た品の良くないオバサマににらまれながら歩くことで、ぼくは「現実」と対峙するだけの意志を蓄積す…

もしもぼくがリアルになってしまったら、そのワルサーP38を模したライターで撃ってください。下北沢のヴィレッジヴァンガード(本田劇場のところにあります)で売っていた、きみが買った永遠に発射されることがない拳銃で。