「おっと手が滑った」そ奴はわざとらしく言った。マウスカーソルが右上に滑り、Exposé がすべてのウィンドウをいちどきに表示する。いまだに Panther に移行していない俺は舌打ちをした。
「そうそう、SharePoints というソフトウェアがあるんだ」俺は言った。
「なんです、それは?」
「Public 以外のディレクトリを AFP で公開する」
「AFP って?」
Apple Filing Protocol の略」
「なんでそんなもんが必要なんですか?」
「俺がエンコードした唄のひとつに『I ♥ オナニー』ってのがある」
「なんですか、それ」
「♥ はラブって読むんだ」
「はあ」
iTunes は、曲名をファイル名にするだろう。そして、♥ という文字はすべてのファイルシステムで簡単に扱えるわけではないんだ」
「ああ、Samba や SSH を介してコピーすると問題が発生するわけですね」
「そうだ。殊に、この愛が足りない世界では」
「それで SharePoints とやらが登場するわけですか。我々の愛を AppleTalk で届けるために」
「そのとおり」
「あれ、このソフト、OS X のバージョンごとにバイナリが違うんですね。10.3 用、10.2 用、10.1 用ってありますよ。あなたはどれをダウンロードしたんですか?」俺は舌打ちした。