そういえば手作りチョコレートをもらったことがない、手作りよりも、俺は店で売ってる生チョコのほうを好んだ。なんて、軽口を叩きながら、公用のタクシーで東京を横断した。ロマンの欠如を罵られる。初手から切り捨てた想いを、しかし、大切にしなきゃダメなのよと説教される。俺はへらへら笑いながら、絶対的なものを相対的なものにおとしめた彼女たちのことを憎んだ。相対的なものを絶対的なものに錯覚した彼女たちのことを哀れんだ。いつだって、いちばんあさはかなのは、あれこれから逃げ出して、原初的な感覚に逃げこんだ俺だった。