つきつけられた刃。「だって、きみ、真面目に恋愛してないでしょ?」姐さんが言った。「そんなこたぁないですよ」俺は告げた。彼我の真面目の間には深刻な対立があるに違いなかった。リアルの真正面に立つ人間と、フィクションをプレイする人間の違い。俺だって真面目にやってはいる。ただし、あれもこれもフィクションとして、だけど。八〇年代の幻影をリアルだと思いこんで生きるより、そっちのほうが余程健全だと信じた。正確にいやあ、そうしなければ正気を保てなかったのだ。それは、もちろん(いつものように)資本の問題だった。