美容室で渡された『DIME』を興味なさそうに、ぱらぱらとめくった。花粉症対策の記事は役に立たなかった。いまさら、甜茶を呑む気にはならなかった。さまざまなパソコンと携帯電話が宣伝されていたが、PowerPC が搭載されているコンピュータは一台もなかったので読む気にはならなかった。携帯でテレビを見るくらいなら、iPodソリティアをプレイするほうがサブカルだった。

そして、その記事が眼をひいた。

横浜から元町まで、線路が延びた。渋谷から直通で中華街や元町に行けるというのが売りだ。いくつかの店が紹介されていた。ちぇ、と、俺は溜息をついた。脳裡に思うのは、本牧の荒野だった。米軍がイナカに帰ったあとの荒野だ。これまでにも増して、イナカモノが産地直輸入され、あの荒野を耕すとでも言うのだろうか(だって、そうだろう? 渋谷はサイタマと直結している)。ためいきをつことして、しかし、俺はなんの痛痒も感じていない自分を見つけて、ほんのすこし困惑した。