そのころ、ぼくは PUSHIM をよく聴いていて、なかでも『雨のバンドネオン』がお気に入りだった。「菅原道真!!」「彼はチョンマゲ!!!?」男と女がかけあう歌詞にめろめろしていた。午後、ぼくはアルバムを流しっぱなしにして仕事をした。「彼はチョンマゲ」と何度もつぶやきながら仕事をした。隣の席の後輩がくすくす笑いながらぼくのほうを見た。その唄が思いださせるのは、誰かと歩いたツツジ祭り。哥貴分が企画した合ハイの集合場所に向かう道すがら、大音量のウォークマンで聴いていたのがその理由。若いひとは知らないかもしれないけれど、合ハイとは合同ハイキングの略だ。